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《06》共有となっている相続財産は、どこで、どのように分割するか−共同相続人の場合。

昭和620904日判決(判例時報1251101 ) 重要度 ○

参照条文:民法258 条 907 条 家事審判法2条乙類10号(旧法)

 

―判例の要旨―

相続により相続人の共有となった財産の分割について、共同相続人間に協議が調わないときは、家事審判法(旧法)の定めるところに従い、家庭裁判所が審判によってこれを分割する。

 

― 解 説 ―

1 相続財産は、相続により、金銭債権等の可分債権を除き、共同相続人の共有となります。この共有となった相続財産は、共同相続人間では、どこで、どのように分割するのでしょうか。

2 1つの方法は、裁判所外での協議による分割です。

民法907 条1項は、次のように規定しています。

共同相続人は、次条の規定により被相続人が遺言で禁じた場合を除き、いつでも、その協議で、遺産の分割をすることができる旨規定しています。

3 しかし、協議が調わない場合があります。この場合につき民法には、次の2つの規定があります。

(1)1つは民法の共有の規定中の258 条1項で、「共有物の分割について共有者間に協議が調わないときは、その分割を裁判所に請求することができる。」

注:用語の使い方ですが、法律は、家庭裁判所の場合は「家庭裁判所」と表示し、単に裁判所と表示されている場合は、「地方裁判所又は簡易 裁判所」を指します。

(2)他の1つは上記民法907 条の2項で、遺産の分割について、共同相続人間に協議が調わないとき・・・は、各共同相続人は、その分割を家庭裁判所に請求することができる旨規定しています。

4 そうして最高裁は、相続財産の共有につき、「民法249 条以下に規定されている共有とその性質を異にするものではない」(最高裁昭30.05.31判決、同判例解説昭30年度P.66)と判決しており、裁判所か家庭裁判所か、どちらで分割するのか一応問題となりますが、本件で最高裁は、共同相続人間の分割は「家庭裁判所」で分割することを明らかにしました。

5 その理由ですが、「遺産分割手続は、共有物分割手続の特別手続として家裁の専属管轄と定められたものであるから、共同相続人は、遺産分割を家裁に請求すべきであり、・・共有物分割訴訟を地裁に提起することはできない」(同判時P.101 )の考え方に基づくものと思われます。

6 なお、現在では、家事審判法が見直され、代わって家事事件手続法が制定されており、平成25年1月から施行されています。

これにより、相続によって相続人の共有となった財産の分割について、共同相続人間に協議が調わないときは、同法の定めるところに従ってなされることになりました。

  もっとも、家事事件手続法も遺産分割に関する事件の管轄を家庭裁判所と定めており(同法191条別表第2の12)、同法制定後も本判例の意義に変わりはありません。

 

(関連判例)

最高裁昭和501107日判決(判例時報799 18)⇒《06−2》

 

 

 

 

《06−2》共有となっている相続財産は、どこで、どのように分割するか−共同相続人ではない場合。

最高裁昭和501107日判決(判例時報799 18) 要度 ○ 

参照条文:民法258 条 907

 

―判例の要旨―

共同相続人の1人から、相続財産である不動産の持分を譲り受けた第三者がその分割を求める場合の手続きは、民法258 条に基づく共有物の分割訴訟である。

 

― 解 説 ―

1 第三者が、共同相続人の1人から、相続財産である不動産の持分を譲り受けますと、当該不動産は、第三者と他の共同相続人との共有となりますが、第三者が分割を求める場合、どこで、どのように分割するのでしょうか。

2 最高裁は、相続財産であっても、第三者と共同相続人との共有の場合の分割は、民法907 条ではなく、民法の一般の共有の規定が適用されると判断しました。

その理由ですが、民法907 条の遺産分割は、全ての相続財産を共同相続人の全員が参加し分割するものですが、上記の第三者は、相続財産中の特定の不動産の共有持分を有し、それのみの分割を求めるのに過ぎないため、遺産分割に参加させるのは好ましくないと判断したものと思われます。

3 そのため第三者の採り得る方法は、次のとおりとなります。

(1)1つは裁判所外での協議による分割です。

民法256 条1項本文は、次のように規定しています。

「各共有者は、いつでも共有物の分割を請求することができる。」

 

(2)しかし、分割協議は調わない場合があります。その場合は、民法258 条1項の「共有物の分割について共有者間に協議が調わないときは、その分割を裁判所に請求することができる。」の規定により、通常は地方裁判所に分割を求めることになります。

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