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《10》死亡退職金の受給権は、相続財産ではなく、受給権者の固有の財産である。

昭和620303日判決(判例時報1232103 ) 重要度 ◎

参照条文:民法896

 

―判例の要旨―

死亡退職金は、相続という関係を離れて、受給権者に支給されたものであり、(被相続人の相続財産ではなく、受給権者の固有の財産である。)

 

― 解 説 ―

1 死亡退職金の受給権は、相続財産を構成せず、受給権者の固有の財産であるという判例は、最高裁の確立した判例であるといっていいと思います。

2 死亡退職金については、2つの場合があります。

1つは、死亡退職金の支給基準、受給権者の範囲・順序が、法令や就業規則で定められている場合、

他の1つは、法令や就業規則で定められておらず、支給に際して、社員総会や理事会で受給権者を決める場合です。

3 前者の法令や就業規則で定められている場合については、これまでに2件の最高裁判例があります(⇒後記同趣旨判例を参照下さい)。

4 本件は、受給権者の範囲・順序等が定められていない場合で、財団法人の理事長の死亡につき、同法人が理事長の妻1人を受給権者と定め、妻に死亡退職金を支払った事案で、最高裁は、理事長の子供2人からの請求を、死亡退職金は相続財産ではない、受給権者の固有の財産であるとして退けたものです。

5 死亡退職金の受給権が相続財産を構成しないとの判断は、生命保険金についての判断と同様です(⇒《09》《09−2》)。

ただ、生命保険金に関する判例では、「生命保険金は、民法903 条1項の特別受益に当たらず、遺留分減殺請求の対象にならない」と判断していますが、死亡退職金に関する判例では、死亡退職金が特別受益に当たるか否か、及び遺留分減殺請求の対象となるか否かについては、まだ判断されていません。この点については、最高裁の今後の判例を待たざるを得ません。

 

(同趣旨判例)

1 最高裁昭55.11.27判決(判例時報991 69

日本貿易振興会の職員の死亡の事案。同会には「職員の退職手当に関する規程」があり、それによれば、死亡退職金の支給を受ける者の第1順位は「内縁の配偶者を含む配偶者」であり、この規程は「遺族の生活保障を目的とし、民法とは別の立場で受給権者を定めたもので、受給権者たる遺族は、相続人としてではなく、右規程の定めにより直接これを自己固有の権利として取得する」と判断しました。

2 最高裁昭58.10.14判決(判例時報1124186

滋賀県立高校の教諭の死亡の事案。滋賀県には、滋賀県学校職員退職手当支給条例、滋賀県職員退職手当条例が定められ、それによれば、死亡退職金の支給を受ける者の第1順位は配偶者(内縁を含む)とされています。判旨は1の判例と同旨。

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