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昭和59年04月27日判決(判例時報1116・29) 重要度 ◎
参照条文:民法915 条 921 条
―判例の要旨―
熟慮期間は、相続人が、相続財産の全部又は一部の存在を認識した時、又はこれを認識しうべき時から起算する。
― 解 説 ―
1 民法915 条1項には、「相続人は、自己のために相続の開始があったことを知った時から3箇月以内に、・・放棄をしなければならない。」と規定され、又921 条には、相続人が3箇月以内に相続の放棄をしなかったときは、「単純承認をしたものとみなす。」(同条2号)と規定されています。
2 「自己のために相続の開始があったことを知った時」とは、@被相続人が死亡した事実、及びA自己が当該被相続人の相続人である事実を知った時とされていますが、この判例は、この原則に例外を認めたものです。
3 本件事案は、被相続人と相続人であるその家族とが、被相続人死亡前10年以上ほとんど没交渉で、ただ家族は、連絡を受け病院で被相続人の死亡には立ち会ったため、上記@、Aの事実は知ったものの、被相続人に相続財産があるとは思わず(相続財産には、プラスの財産、マイナスの財産を含みますが、通常は借金等のマイナスの財産の存在についての認識と思われます)、相続放棄の手続きを採らずに放置していたところ被相続人死亡から1年程経過した後、被相続人に連帯保証債務があったことが判明した事案です。
4 最高裁は、相続人が、被相続人に相続財産が全くないと思い、そう思ったことに相当な理由がある場合は、熟慮期間は、相続財産(通常は借金等の負債)の存在を認識した時から起算する、と判断しました。