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《20》相続人が、代償分割により負担した債務を履行しない場合でも、他の相続人は、債務不履行を理由に遺産分割協議を解除できない。

平成元年0209日判決(判例時報1308118 ) 重要度 ○

参照条文:民法907 条 909 条 541

 

―判例の要旨―

代償分割した場合に、相続人が他の相続人に対し負担した債務を履行しないときであっても、他の相続人は、民法541 条(債務不履行による解除)によって遺産分割協議を解除することはできない。

 

 
― 解 説 ―


 

本件は、上記のような家族関係で、X死亡による遺産分割に際し、Bは、法定相続分よりも多い相続財産の分割を受けましたが、その代償として、次の債務を負担しました(以下には、負担した債務の主たるもの2つのみを記載します)(以下「本件分割協議」といいます)。

@  Bは、Bの妻とともに、Aの日々の食事その他身の廻りの世話を、Aの満足を得るような方法で行う。

A  Bは、祖先の祭祀を承継し、各祭事を誠実に行う。

2 民法541 条には、「当事者の一方がその債務を履行しない場合において、相手方が相当の期間を定めてその履行の催告をし、その期間内に履行がないときは、相手方は、契約の解除をすることができる。」と規定されています。

なお、遺産分割も、遺産を分割する1つの契約です。

3 ところでBは、負担した@、Aの債務を履行しないどころか、逆にAに傷害を負わせたりしたため、C〜Fが、民法541 条により、Bの債務不履行を理由に本件分割協議を解除したうえ、裁判でBに対し、Bが取得した不動産の登記を、共同相続人の共有の登記にするよう求めたりしました。

4 裁判では、本件分割協議が民法541 条で解除できるか否かが問題となり、最高裁は、遺産分割は、相続開始の時にまで遡及するところ(民法909 条本文)、これに解除を認めれば、「法的安定性が著しく害される」との理由で解除を認めませんでした。

5 解除ができないとしたら、相続人が代償分割で負担した債務を履行しない場合、他の相続人はどうすればいいでしょうか。

(1)金銭の場合は、代償金が貰える予定の相続人が、支払いを約した相続人に対し、代償金の支払いを求める裁判を提起し、その判決に基づき強制執行します。

(2)負担した債務が金銭以外の、例えば上記@とかAのような債務の場合、「〇〇〇をせよ」との具体的な内容が特定できないため判決を取得しようがなく、そのため債務を履行させる方法がないのが実情です(「〇〇〇をせよ」との判決が取得できれば、間接強制という強制執行の方法があります−民事執行法172 条)。

6 なお、遺産分割協議に錯誤、詐欺、強迫など意思表示の瑕疵がある場合は、当該協議の無効とか取消を主張できるとされています(同判時P.119 )。

 
(関連判例)
最高裁平成020927日判決(判例時報138089
共同相続人全員で、遺産分割協議を合意解除すること、(そうしてその後 再分割すること)はできる。

 

 

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