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平成06年09月13日判決(判例時報1513・97) 重要度 ○
参照条文:所得税法33条 60条 民法909 条
―判例の要旨―
1 共同相続人の1人Aが、他の相続人に代償金を支払い不動産を自己の所有とした場合は、Aが当該不動産を相続開始のときに単独相続したことになるのであり、他の相続人から共有持分の譲渡を受けたことになるものではない。
2 そうすると、Aの当該不動産の取得は所得税法60条1項1号の「相続」による取得で、Aが当該不動産を売却したときの譲渡所得の計算では、「相続前から引き続き所有していた」ものとして取得費を考えることになるから、代償金は取得費に算入できない。
― 解 説 ―
1 相続財産である不動産は、相続開始と同時に共同相続人の共有となります。本件でAは、代償金は、他の相続人の共有持分の購入代金であり、当該不動産を売却した場合は取得費に算入できる旨主張しましたが、最高裁は、Aが当該不動産を相続開始時に単独相続したものと解釈し(民法909 条−遺産分割は、相続開始時に遡る)、所得税法の上記条項を適用してAの主張を退けました。
2 代償金は、遺産分割における「相続人間の実質的公平を実現するための調整金」(同判時P.98)であり、共有持分の購入代金と考えるには無理があるかと思われます。
3 なお、代償金は、相続税の課税価格の計算において配慮されています(相続税法11条の2、相続税基本通達11の2−9、11の2−10)。