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平成元年02月16日判決(判例時報1306・03) 重要度 ○
参照条文:民法968 条
―判例の要旨―
自筆証書遺言の「印を押す」は、遺言者が印章に代えて、拇指その他の指頭に墨、朱肉等をつけて押捺すること(以下「指印」という)をもって足りる。
― 解 説 ―
1 自筆証書で遺言する場合、遺言者は、@その全文、日付及び氏名を自書し、Aこれに印を押さなければならない、と規定されています(民法968 条1項)。
2 そうしてこの「印」につき、印章(はんこ)を使用しなければならないか、あるいは指でもいいかにつき、考え方が分かれていました。
3 最高裁は、本件判例で「指印でもいい」と判断し、その後も、
(1)最高裁平元.06.20判決(判例時報1318・47)
(2)最高裁平元.06.23判決(判例時報1318・51)
で同趣旨の判断を示しています。
4 なお、法的文書で、署名したうえ「印を押さなければならない」とまで規定されているのはさほど多くはなく、通常は、「署名又は記名押印」とされています(会社法369 条3項−取締役会議事録−、商法32条など)。
しかし、非常に重要な事項については、署名と押印の両方が求められています(本件の自筆証書遺言、戸籍法に基づく出生や婚姻の届出−戸籍法29条−など)。
(関連裁判例・判例)
以下の裁判例・判例では、自筆証書遺言が、いずれも「押印」の要件を欠くものとして無効と判断されています。
1 東京地裁平成25年10月24日判決(判例時報2215・118)
遺言書の末尾に遺言者の署名と片仮名を崩したサイン様のものが記載されていた事案。
2 最高裁平成28年6月3日判決(同裁判所平成27(受)118号事件)
氏名を自署し、その名下にいわゆる花押が記載されていた事案。