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《26−2》「相続させる」趣旨の遺言の代襲相続の可否

  平成23222日判決(判例時報210852) 重要度 ◎

  参照条文:民法887条 908

 

―判例の要旨―

「相続させる」趣旨の遺言は、当該遺言により遺産を相続させるものとされた推定相続人が遺言者の死亡以前に死亡した場合には、遺言者が代襲者等に遺産を相続させる旨の意思を有していたとみるべき特段の事情のない限り、その効力を生じない。

 

― 解 説 ―

1 この判決は、「相続させる」趣旨の遺言に関する判例の派生的問題について、従来下級審でも判断が分かれていた点に初めて最高裁が判断をしたもので、社会的にも注目された判例です。

2 事案の概要

 本件事案の概要を簡略化して時系列で整理すると、以下のようになります。

(1) 被相続人Aが、遺産の全部を子Bに相続させる趣旨の遺言を作成。

(2) Bが死亡(遺言者であるAよりも先に亡くなりました)。

(3) Aが死亡し、法定相続人は、Aのもう一人の子であるXとBの子(Aの孫)であるY。

(4) Xは、Bが遺言者Aよりも先に死亡したため当該遺言は効力を生じない、として法定相続分の相続を主張。

3 代襲相続について

  民法8872項は、被相続人の子が相続開始以前に死亡したときは、その者の子がこれを代襲して相続人になると定めており、これを代襲相続といいます。

  本件では、「相続させる」趣旨の遺言によって財産を相続するとされた者が遺言者よりも先に死亡していた場合に、この民法8872項の代襲相続に関する規定が適用されるかが問題となりました。

4 最高裁は、代襲者に遺産を相続させる意思を有していたとみるべき特段の事情のない限り遺言は効力を生じないと判断しました。つまり、「相続させる」趣旨の遺言における代襲相続を原則として否定したことになります。

本件では、特段の事情も認められないとして遺言は効力を生じないと判断していますので、最終的にはXとYらがそれぞれ法定相続分による遺産分割協議をすることが必要になります。

5 しかし、本件のような遺言を書いた遺言者の意思としては、財産を相続させようとした者の代襲者にもその財産を相続させるつもりがある場合も多いのではないかと思われます。

  本件判例を前提にしますと、そのような場合は「特段の事情」として、「相続させる者が遺言者よりも先に死亡した場合には代襲者に相続させる」旨を遺言書に明記しておく必要があります。又既に遺言書を作成している方にとっても、その後の状況の変化によって遺言を書き直しておく必要も生じてきます。

6 特段の事情というのも結局は遺言をどう解釈するかという問題ですが、遺言が問題になるのは遺言者が亡くなった後ですので、遺言者が、「私はこう考えていたのだ」ということはできません。遺言書には、できる限り明確な意思を記載しておかなければならないといえます。

 

 

 

 

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