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《09》生命保険金は、遺留分減殺請求の対象とはならない。

平成141105日判決(判例時報180417) 重要度 ◎

参照条文:旧民法1031  保険法42条

 

―判例の要旨―

相続人でない者が受取人に指定され取得した生命保険金は、遺留分減殺請求の対象となる「遺贈又は贈与」(旧民法1031条)には当たらない(従って、遺留分減殺請求の対象にはならない)。

 

― 解 説 ―

1 本件は、元々は妻(共同相続人)が受取人でしたが、不仲となったため、受取人を変更し自己の父親(相続人ではない者)を受取人に指定した事案で、父親の受領した生命保険金が、遺留分減殺請求の対象になるか否かが争われた事案です。

2 本件で最高裁が遺留分減殺請求を否定しましたのは、受取人が指定された生命保険金は、保険契約締結と同時に受取人の固有財産となり、被相続人の相続財産を構成しないという確定した判例(最高裁昭40.02.02判決、同判例解説昭40年度P.18)が前提とされているものと思われます(被相続人の相続財産を構成しないということは、被相続人自身の財産ではないことで、自分の財産ではないものを、遺贈したり贈与したりすることはできず、従って、遺留分減殺請求の対象にもならないことになります)。

3 なお、生命保険金の受取人が共同相続人の1人の場合は、民法903 条の問題となり、その生命保険金が民法903 条1項の遺贈又は贈与の「特別受益」に当たるか否かの問題となりますが、最高裁は、後の平成16年の判決で(⇒《09−2》)、判決で特別受益には当たらない旨判断しています。

(関連判例)

死亡退職金に関する判例

昭和620303日判決(判例時報1232103 )⇒《10》

 

 

 

《09−2》生命保険金は、民法903 条1項の「特別受益」には当たらない。

平成161029日判決(判例時報188441) 重要度 ◎

参照条文:民法903   保険法42条

 

―判例の要旨―

共同相続人の1人が受取人と指定され取得した生命保険金は、民法903 条1項の「遺贈又は贈与」の特別受益には当たらない。

但し、特段の事情が存する例外的な場合は、同条を類推適用するのが相当である。

 

― 解 説 ―

1 共同相続人の1人が受取人と指定され取得した生命保険金は、民法903 条1項の「遺贈又は贈与」の特別受益には当たらないため、同条項が規定する「持戻し」をする必要もありません。

2 最高裁がこのような結論に至りましたのは、《09》で述べましたように、受取人が指定された生命保険金は、保険契約締結と同時に受取人の固有財産となり、被相続人の遺産を構成しないという確定した判例(最高裁昭40.02.02判決、同判例解説昭40年度P.18)が前提とされているものと思われます。

3 又本件で最高裁は、特段の事情が存する例外を想定していますが、それは、他の共同相続人との間に、「民法903 条の趣旨に照らし到底是認することができないほどに著し」(同判時P.44)く不公平が生じる例外的な場合で、その場合は、民法903 条を類推適用するとしています(遺贈や贈与には当たりませんので、民法903 条を直接適用することはできず、そのため、「類推」して適用することになります)。

 

 

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